職人の想い
職人の想い
マルキ阿部商店 山條 貴秀
余市の近くで生まれて、子どもの頃から食べることも何かをつくることも好きでした。水産加工の仕事に就いてからは、いろんな加工食品を作ってきました。からすみを初めて作ったのは2022年でしたが、当初はそれまで製造はおろか、食べたことすらありませんでした。北海道では、からすみを食べる文化がないのです。
からすみは歴史のある食べ物ですが、数少ない生産者の中で伝統が守られてきたからか、その製造方法の詳細は調べてもわかりません。1年弱の間、毎日毎日試行錯誤を重ねました。あらゆる原料を試すことから始まり、乾燥一つとっても、北海道だと天日干しもできないので、投光器で光を当てるなど訳のわからないこともたくさん試してみました。そんなある日、熟成と発酵の基本に立ち返ったとき、バババっとこれまで考えてきたピースがはまり、納得できる味ができたのです。塩漬けや塩抜きにかなりの手間をかけていますが、その分、質の高い熟成や殺菌にもつながっています。
完成まではかなりの忍耐を要しましたが、既存のものとは一線を画す、まったく新しく、本当に美味しいからすみができたと自負しています。からすみは歴史がある分、新しいことをする必要もなく、変化が起きなにくい業界なのだと、今となっては思います。
子どもの離乳食を作るようになってから、初めて食べるものは美味しいものであってほしいという想いが強くなりました。からすみはクセの強い珍味というイメージを持っている方も少なくないでしょう。北こはくは塩っぱすぎず、臭みもなく、無添加で、自分のようなお酒好きや、初めてからすみを食べる方にもはぴったりな味わいです。海のチーズというイメージで召し上がっていただけるはずです。
まずはそのままカットして。パスタなどはもちろんですが、バターごはんや、牛タンにトッピングするのもお薦めです。これからの北海道を代表するような、酒のつまみになったらとても嬉しく思います。